山留め壁と切梁|力の流れと、掘削段階ごとの検討
山留めは、掘削した面が崩れないように土を押さえる仮設構造物です。
山留めは、掘削した面が崩れないように土を押さえる仮設構造物です。
計算の考え方は足場や支保工と共通しています。力がどこから来て、どこへ抜けるかを追う。ただし山留めには一つ特有の性質があります。掘削の進行とともに条件が変わることです。
この記事では、力の流れと段階施工の考え方を整理します。
1. 力の流れ
土圧・水圧 → 山留め壁 → 腹起し → 切梁 → 反対側の腹起し → 反対側の山留め壁
背面の土が山留め壁を押します。壁は面で受けますが、そのままでは支えきれないため、切梁で突っ張ります。
腹起しは、壁が受けた分布荷重を切梁へ集約する部材です。切梁は点でしか支えられないため、壁と切梁の間に線で受ける部材が要ります。腹起しが不連続だったり、壁との間に隙間があれば、その機能が果たせません。
壁と腹起しの密着
腹起しと山留め壁の間に隙間があると、壁が変形してから初めて力が伝わります。その分だけ余計に変形します。裏込め材やモルタルで密着させるのは、この変形を抑えるためです。
2. 土圧をどう設定するか
土圧は山留めの計算で最も重要かつ、最も判断が要る部分です。
主働土圧・静止土圧・受働土圧
壁が背面側から押されて前へ動こうとする状態では主働土圧、壁がまったく動かない状態では静止土圧を考えます。掘削側では、壁が土を押す受働土圧が抵抗として働きます。
どれを採用するかは、山留めの剛性と許容する変形量によります。変形を厳しく抑える必要がある場合(近接構造物がある場合など)は、大きい土圧で設計します。
水圧
地下水位が高い場合、水圧が加わります。水圧は土圧より大きくなることがあり、扱いを誤ると致命的です。地下水位の確認と、排水・止水の計画が前提になります。
上載荷重
背面に構台、資材置場、重機、道路がある場合、その荷重が土圧を増やします。構台の荷重を山留めの背面荷重として算入しているか、確認してください。
要確認:土圧算定式、採用する土質定数、水圧の扱い、上載荷重の設定方法
3. 掘削段階ごとに検討する
ここが山留めの計算で最も見落とされる点です。
最終形だけを検討しても不十分です。
掘削の進行に伴って、山留め壁の支持条件が変わります。
| 段階 | 状態 |
|---|---|
| 1次掘削 | 切梁なし。片持ち梁として抵抗 |
| 1段目切梁設置後 | 支点が1つ。さらに掘削 |
| 2段目切梁設置後 | 支点が2つ。1段目の軸力が増えることもある |
| 最終掘削 | 支点が複数。最下段の根入れ部が効く |
各段階で、山留め壁のモーメント分布も、切梁の軸力も変わります。どの段階でどの部材が最大になるかは、やってみないとわかりません。
さらに、切梁を撤去していく段階(躯体構築に伴う盛替え)でも条件が変わります。設置時と撤去時の両方を検討してください。
4. 切梁の検討項目
軸力に対する座屈
切梁は長い圧縮材です。座屈が支配します。中間杭で支持して座屈長さを短くするのは、このためです。
自重による曲げ
水平に架け渡されているため、自重でたわみます。軸力と曲げの組合せで検討します。
温度応力
鋼材は温度で伸縮します。両端を拘束された切梁は、気温が上がれば圧縮軸力が増えます。特に日射を受ける上段の切梁で顕著です。
プレロード
あらかじめジャッキで押しておき、変形を抑える方法です。近接構造物がある場合に用います。ただし押しすぎれば背面地盤を押し戻すことになるため、管理値の設定が必要です。
5. 計測管理とセットで考える
山留めは、計算だけで完結しない仮設です。土質のばらつき、地下水の変動、施工誤差。前提が実際と違う可能性が常にあります。
そのため、計測管理が組み込まれます。
- 壁体の変位(傾斜計)
- 切梁の軸力(ひずみ計)
- 地下水位
- 近接構造物の変位・沈下
管理基準値を設定し、超えた場合の対応を決めておく。計算はその出発点であって、終点ではありません。
6. まとめ
- 力は土圧 → 壁 → 腹起し → 切梁の順に流れる
- 腹起しは分布荷重を切梁へ集約する部材。密着が前提
- 水圧は土圧より大きくなることがある
- 背面の構台・資材・重機は上載荷重として算入する
- 最終形だけでなく、掘削の各段階で検討する
- 切梁の撤去段階も検討対象
- 切梁は座屈・自重曲げ・温度応力を確認する
- 計測管理とセットで運用する
以上で足場・重機・構台の連載は終わりです。
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